1、半透明有機太陽電池(OPV)を利用したトマト栽培&太陽光発電の実証試験
図 京都大学付属農場(木津)内に設置された試験温室2棟と内部
京都大学付属農場(木津)内の温室に半透明有機太陽電池(OPV)を装着し.発電することにより、エネルギー収支とトマトの収量への影響を調査し、二酸化炭素排出量を大幅に削減できるか実証を行いました。結果として、OPVの発電効率が小さいために実証実験では明確な二酸化炭素削減にはなりませんでしたが、得られたデータからより豊富な日射が期待できる九州地方において、二重カーテンなど冬季の保温とヒートポンプを導入することにより二酸化炭素削減が可能であることを示すことができました。(Resour. Conserv. Recy., 138, 2018, 110-117; J. Environ. Manage. 2018, 15, 226, 493-498)
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2、労働フットプリント
図 商品に課された労働フットプリントとそれを原材料として作られた製品群を経て末端消費者に供給される様子
世界で初めて、発展途上国の不法労働が先進国の市場に及ぼしている影響を環境フットプリントに準じて労働フットプリントと名付けて提案しました。本報告では、インドにおける子どもの不法就労が世界に及ぼす影響を国際産業連関表を用いて調査しました。その結果、特に繊維、織物産業が大きく、国外では米国市場に最も大きな影響をおよぼしていることがわかりました。論文ではさらに、環境フットプリントとの関係について議論しています。(Econ. Syst. Res., 2015, 27 (4), 415-439)
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3、インドネシア、ジョグジャカルタ地方の太陽光発電、風力発電システムの導入の設置場所最適化
図 インドネシア、ジョグジャカルタ地方を例に風量、太陽光発電の最適値をGISを用いて最適化
インドネシア、ジョグジャカルタ地方を例に、太陽光発電、風力発電システムの導入に対して最も効率の良い設置場所選定方法を提案しました。土地の価格、資源量、消費地、変電所からの距離を勘案して、最小コストとなる場所の候補を示しました。この手法を用いることで、今後再生可能エネルギー導入政策に適応できることを示しました。
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4、日本とタイの中学生を対象としたアンケート調査
図 日本とタイの中学生を対象としたアンケート結果より環境行動規定因を抽出しその強度の比較
日本とタイの中学生を比較したとき日本は基本的な知識は身につけているが、省エネルギー行動に直接結びつかない一方、タイ人の方は知識は高くないにも関わらず、省エネルギー行動をより多く行う傾向がみられました。計画的行動理論に基づき構造モデル分析を行った結果、タイ人の行動要因が社会的規範(周囲が行動を期待している)や習慣に基づいていることが明らかになり、文化的な背景が行動に影響していることを明らかにしました。(Int. J. Educ. Method. 2019, 5 (2), 183-201)
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5、文献ビッグデータを用いた新規イノベーションの創出
図 二つの異分野の文献データクラスター分(左と上)のキーワード相関性を調べ、異分野ながら技術互換性の高い分野を抽出する様子
近年、電子化技術の急速な発達に伴って、何十万件という非常に多くの学術論文のビッグデータが存在しており、研究者個人が到底読み切れる量ではなくなっています。これに対し、Newman法というアルゴリズムを学術文献の引用関係に適応すると、文献データが学術トピック毎にクラスターとして分離され、それぞれの学術のトピックの平均出版年や出版数等を知る事で学術分野全体像を俯瞰できる手法が開発されました。
本研究では、上記の手法を用いて二つの異分野の文献データをクラスター分けし、分かれたクラスタ―の異分野同士のキーワード相関性を計算して相関性が高い分野を抽出しました。キーワード相関性が高いということは、異分野ながらも技術相関性が高く、互い発展させてきた分野独自の技術を互換でき、相互に研究を発展させる可能性を示しています。この手法は、技術を発展させる共同研究の種を、文献ビッグデータから機械的に創出する技術として期待されます。(Technol. Forecast. Soc. Change 2017, 120, 41-47.; 東工大・梶川研との共同研究)